院長の「右腕」になるリーダースタッフの育て方|選び方・任せ方・つまずきやすい点

「スタッフが5人を超えたあたりから、全員に目が届かなくなった」「主任を決めたのに、結局なんでも自分のところに相談が来る」。

クリニックの規模が大きくなると、多くの院長がこの壁にぶつかります。

私は医療法人の事務長として、リーダーの選任や育成、リーダーと院長の間の調整に携わってきました。その経験から言えるのは、リーダーがうまく機能しない原因の多くは、本人の能力ではなく「任せ方」にあるということです。

この記事では、院長の右腕となるリーダースタッフの選び方と任せ方、そしてつまずきやすい点を整理します。

なぜリーダーが必要になるのか

院長が直接、一人ひとりと丁寧に関われる人数には限りがあります。スタッフが増えると、次のようなことが起き始めます。

  • 小さな確認や相談がすべて院長に集まり、診療の手が止まる
  • スタッフ同士の行き違いに、院長が気づくのが遅れる
  • 新人の教育が、その日たまたま隣にいた人任せになる

これは院長の力不足ではなく、組織の形が人数に合わなくなってきたサインです。院長とスタッフの間に立つ役割が必要になります。

リーダーを選ぶときに見るポイント

リーダーというと、「一番仕事ができる人」「一番長く勤めている人」を選びがちです。しかし、仕事ができることと、人をまとめられることは別の力です。

リーダーを選ぶときに見る4つのポイント。周りから相談されている、院長に事実を報告できる、自分のやり方を言葉で説明できる、感情が安定している

1. 周りのスタッフから相談されているか

すでに自然と相談が集まっている人は、周りから信頼されています。肩書きがなくても、実質的にリーダーの役割を果たしていることが多くあります。

2. 院長に「事実」を報告できるか

良いことも悪いことも、感情や憶測を混ぜずに伝えられる人です。院長にとって耳の痛い話を、きちんと持ってきてくれる人は貴重です。

3. 自分のやり方を言葉で説明できるか

「見て覚えて」ではなく、なぜそうするのかを説明できる人は、後輩を育てられます。

4. 感情が安定しているか

機嫌によって対応が変わる人がリーダーになると、スタッフは顔色をうかがうようになり、報告が上がらなくなります。

「任せたのにうまくいかない」3つの原因

リーダーを決めたのに機能しない場合、原因は次の3つのどれかであることがほとんどです。

リーダーに任せるときに決めておく3つのこと。役割の範囲、決めてよいこと、支える仕組み

原因1:役割の範囲があいまい

「主任をお願いね」と伝えただけでは、何をすればよいのかわかりません。シフトの調整、新人の教育、備品の管理、スタッフの相談窓口など、具体的に何を担うのかを書き出して共有します。

原因2:決めてよいことが決まっていない

責任だけ渡されて、決める権限がない状態です。すべて院長に確認しなければ進められないなら、リーダーを置いた意味がありません。

「ここまでは自分で決めてよい」「ここからは院長に相談する」という線を引きます。たとえば、シフトの交代は自分で決めてよい、新しい備品の購入は一定の金額まで、といった形です。

原因3:支える仕組みがない

リーダーは、院長とスタッフの板挟みになりやすい立場です。任せたまま放っておくと、一番頼りにしていた人が疲れ果てて辞めてしまうことがあります。

  • 院長とリーダーが定期的に話す時間をつくる(月1回、30分でも十分です)
  • 役割に見合った手当や評価を用意する
  • リーダー自身が相談できる相手を用意する

リーダーに任せる前に、院長が決めておくこと

  • リーダーに担ってほしい役割を、3〜5個に絞って書き出す
  • 「自分で決めてよいこと」と「相談してほしいこと」を分ける
  • 他のスタッフ全員に、リーダーの役割を院長の口から伝える
  • 院長とリーダーが話す定例の時間を、先に予定に入れる
  • 手当や評価など、役割に対する処遇を決める

特に3つ目の「院長の口から全員に伝える」は見落とされがちです。これがないと、他のスタッフはリーダーの指示に従う理由がわからず、リーダーが孤立します。

リーダーを飛び越えない

リーダーを置いた後、院長が気をつけたいのはリーダーを飛び越えて指示や判断をしないことです。

スタッフから直接相談を受けたとき、その場で院長が決めてしまうと、「リーダーに言うより院長に言った方が早い」となり、仕組みが崩れます。「それはリーダーと相談してみて」と一度戻すことが、リーダーを育てることにつながります。

外部の立場から、リーダーの育成を支える

リーダーの育成は、院長にとってもリーダー本人にとっても、手探りになりやすいテーマです。院長には直接言いにくい悩みを、リーダーが抱えていることも少なくありません。

Medical Essentialでは、事務長の実務経験をもとに、リーダーの役割の整理、院長との定例の場づくり、リーダー本人との面談や相談対応まで、組織づくりを現場で伴走しています。スタッフの定着については、スタッフが辞めるクリニックに共通する5つのサインもあわせてご覧ください。

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AUTHOR

北野 雄也 Medical Essential 代表

医療法人の事務長として、採用・組織づくり・経営改善に携わる。医療コンサルタントとして開業支援から経営改善まで幅広いプロジェクトを担当。事務長の実務経験をもとに、「院長の右腕」としてクリニックの数値管理・組織づくり・業務改善を月額の顧問サポートで伴走している。